一人暮らしの老後のお金の中でも心配なのが、介護費用。もし介護が必要になったら、いくらぐらいお金がかかるのでしょうか?
厚生労働省の“介護給付費実態調査月報(平成27年度)”によると、60代後半に介護サービスを利用した人はわずが2%しかいないのに、75歳を境に急激に増え始め、80歳後半では、男性は3人に1人、女性は2人に1人が要介護・要支援になっています。
毎月の介護にかかった費用の平均(公的介護保険サービスの自己負担額を含む)は、月に7.9万円。介護の平均期間は59.4ヶ月(約5年)なので、老後に必要な目安は、約467万円になります。
介護にいくらかかるかは元気で長生きするのか、寝たきりになってしまうのかでかなりの差がありますが、心配なら平均額の500万程度を余分に用意しておくといいのではないでしょうか。
ただし、介護保険のしくみをもっと知っておくことも大切です。
公的介護保険のしくみ
介護サービスを受けるには、要介護認定を受ける必要があります。
市町村の窓口に『要介護認定申請書』を提出すると、自宅に調査担当者がやってきます。その結果とかかりつけ医の意見書を元に、“自立”、“要支援1~2”、“要介護1~5”のいずれかに決定します。要介護度は1~5まであり、数字が高い5になるほど重症。認められると
要支援→介護予防サービス
要介護→介護サービス
が受けられます。
利用できるサービスの月額には、要介護度別に限度があり、その範囲のなかでケアプランを作ります。かかった費用の1割(一定以上の所得がある人は2割または3割)負担すればいいというしくみになっています。
介護保険適用外で自己負担になるもの
- 自己負担の上限額以上のサービス
- おむつ代
- 配食サービス など
※自治体によっては補助を受けることができるものもあります
国民健康保険と公的介護保険は似ていますが、決定的な違いは『利用できる金額に上限がある』点です。国民健康保険はどれだけ医療費がかかっても自己負担額が3割を超えることはないのに対し、公的介護保険は利用点度額を超えると全額自己負担になってしまいます。
要介護度が高まると、さまざまなサービスを受ける支給限度額も高くなる一方、その分自己負担も増えていきます。
介護のサービス限度額と自己負担額の目安
下の表は、在宅サービスを利用する場合の1ヶ月あたりのサービス利用限度額と自己負担額の目安の一覧(平成28年現在)です。介護を受ける場合はこの範囲内でケアプランを立てるのが基本です。
要支援1 | 支給限度額:約50,030円
自己負担額:1割:5,003円 2割:10,006円 |
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要支援2 | 支給限度額:約104,730円
自己負担額1割:10,473円 2割:20,946円 |
要介護1 | 支給限度額:約166,920円
自己負担額:1割:16,652円 2割:33,304円 |
要支援2 | 支給限度額:約196,160円
自己負担額:1割:19,616円 2割:39,232円 |
要介護3 | 支給限度額:約269,310円
自己負担額:1割:26,931円 2割:53,862円 |
要介護4 | 支給限度額:約308,060円
自己負担額1割:30,806円 2割:20,946円 |
要介護5 | 支給限度額:約360,650円
自己負担額1割:36,065円 2割:72,130円 |
※1単位あたりの介護サービス費用は自治体によって異なります。自己負担額の割合は収入によります。
最も要介護度の高い5の場合でも限度額360,650円の範囲なら、自己負担額1割の上限は月に4万円弱程度。
介護費用を安くするには?
介護に必要なお金の負担を安くする方法があります
自立支援医療制度
認知症などの精神疾患で治療を受ける場合、通院や医薬品などの費用が一割負担で済みます。市町村の障害者福祉関連窓口または保健所に申請
障害年金
認知症と診断された場合、国民年金、厚生年金、共済年金のいずれかに加入し、保険料を払っているなど条件を満たしていれば障害年金がうけられます。かかりつけ医のソーシャルワーカーや介護福祉士に相談
介護サービス利用者負担額軽減制度
介護サービスを利用し、自己負担分が一定の上限額を超える場合に超えた分が後から払い戻される制度。市町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センターに問い合わせ
自治体のサービスを利用する
公的介護保険の対象でないサービスの利用料は基本的には、全額自己負担ですが、独自の高齢者向けサービスを無料、または格安で、提供している自治体が多くあります。
例えば、
家事代行サービスは民間だと1時間3000円ほどかかるところも多いですが、買い物や通院の付き添い、調理、掃除、洗濯などの身の回りのサポートサービスが1時間当たり数百円で受けられるところもあります。
緊急通報システムも大手民間業者だと、月額4,000円台ですが、月額1000円以下で利用できる自治体もあります。
使えるサービスを知り、もれなく使うことは、介護破産の回避につながります。よく調べてみましょう。
一人暮らしの介護費用にいくら用意しておけばいい?
介護の度合いが低ければ自宅に住み続ける事ができますが、一人暮らしの場合は、家族と同居している人よりも介護施設に入る確率は高くなります。
施設に入って介護をしてもらうと在宅介護に比べると費用が高くなる傾向になりますので介護資金は少し余分に用意しておくのが安心。
といっても、高齢者住宅は、公的年金の範囲内で住めるというところから高額のところまでピンキリ。高額の介護施設に入るなら自分の資産を把握することが先決で、1,000万~(上は限りがない)ほど多く老後資金を備えている必要があります。
最初に紹介したとおり、介護費用の平均額は月に7.9万円です。これには、高額な高齢者施設に入った人の介護費用も含まれています。心配な人は平均額(約500万円)を備えておきましょう。
そこまで用意できないという人も、在宅サービスを利用する場合の1ヶ月の利用限度額と自己負担額の目安の一覧を見ると、受けたいサービスと利用限度額を踏まえて、年金収入の範囲内で無理なく利用することができれば、お金の心配はそこまで心配せずに在宅介護を受ける事がわかります。
それでも公的介護保険だけでは心配という人は、生命保険各社から販売されている民間の介護保険に入ることを検討してみてください。
民間介護保険は、所定の介護保険は一時金が支払われるタイプと年金が支払われるタイプがあり、その両方を組み合わす事もできるものもあります。一時金は、自宅の改装費用などにも充当できます。一方、年金は、介護費用やその後の生活費などのお金と考えます。
契約を考える場合は、まず保障期間を考えます。年齢が上がるほど、介護の可能性が高まるので、終身保障での準備がおすすめ。
しかし、民間の介護保険の加入率は14.1%にとどまり、それほど普及していません。
介護費用が増えないように健康を備えることも介護費用を抑えることにつながります。
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